この国の未来を考える

鈴木砂羽演出劇の降板騒動について思うこと

日本の芸能界に〝人権〟はあるのでしょうか?

鈴木砂羽さん演出の舞台劇降板騒動が報じられています。と言っても、まだごく一部に過ぎず真偽についても定かではありません。なにしろ双方の言い分が真っ向から食い違っているからですが、ポイントは劇団の主宰者である江頭美智留氏でしょうね。ディリーの記事では一番あやふやなのがこの人ですから。

 

私は、何が本当かについてはさほど興味がありません。おそらく、誤解が誤解を招くという類いのものだと思うからです。ただ土下座の有無は別にしても、尊厳を侵すような罵倒や言動があったとしたら、やはり問題だろうと思います。なぜなら、如何なる理由があろうとも尊厳が侵されていい人間は存在しないからです。ところが今回の件で驚いたのは、俳優である高橋克実氏と梅沢富美男氏の発言でした。

 

高橋克実、鈴木砂羽パワハラ騒動に疑問 演劇界では「普通ですから」
   (ディリーニュース 9.13付け)

梅沢富美男、鈴木砂羽舞台降板の女優に激怒「こんなふざけた話ない」
   (ディリーニュース 9.13付け)

 

色々意見があるのは承知しています。ただ、高橋氏の「パワハラと書かれていますけど(演劇の世界では)普通ですから」には、さすがに呆れました。
 梅沢氏にしても「・・・出ると決めたなら(降板は)お客さんに失礼です・・・」という発言は劇団側・演出側の一方的な意見であり、一度でも出演を承諾したのなら、如何に理不尽であっても役者さんたちは我慢すべきという前提に立っているのです

 

一見正論のようですが、とんでもない! と言わざるを得ません。なぜなら、これらの発言の根底にあるのは「成功者の驕り」だからです。

 

高橋氏は、演出家はまずは人格否定から入りますから、と言っているけれど、おそらく高橋氏は人格否定とは何かを知らないのでしょう。だから軽々しくこの言葉を使うのでしょうが、本当にされてごらんなさい、精神が破壊されても不思議ではないのです。演技どころではなくなりますよ。
 もちろん演出家が役者さんを罵倒したりするのは知っていますし、それが必ずしもパワハラだとは言えないことも理解しています。けれども高橋氏は、パワハラとは何かということもおそらく理解していないようです。
 よろしいですか、発した側がパワハラと思っていなくても、投げ付けられた側がそう感じれば、それは「パワハラ」なのです。構造はイジメと同じなのですよ。

 

なぜ近年になって「セクハラ」とか「パワハラ」とか「モラハラ」などが問題になってきたのか。それは全て「人権問題」だからなのです。その認識がなければ、高橋さん、あなたも加害者になってしまうでしょう。

 

 しかし、そこには根深い問題が潜んでいるのです。同じ記事にカンニング竹山さんの発言もありました。彼は、
「パワハラがダメだとかいうけど、この世界はやりたい人が手を上げる世界。仕事を無理矢理やってくれという仕事じゃない」
「チケットを売っちゃってるんだから、一回乗ったらどんなに嫌な演出家でも、殺してやろうと思うディレクターでもやることはやんなきゃダメ。終わってから文句言って二度とあいつと仕事しないと(なればいい)」

 

 では竹山さんにお聞きしたい。好きなことをやっているのだから、たとえ理不尽なことでも我慢すべきなのですか? だったら韓国で問題になった、女優さんによる〝違法接待〟も容認することになりませんか? でも、たぶん程度問題だと言うでしょう。であれば今回の件は、二人の女優さんにとっては許容範囲を超えていたのかも、という発想はしないのでしょうか?

 

 しかし高橋さんも竹山さんも梅沢さんも、決してそんな発想はしないでしょう。なぜなら彼らは「成功者」だからです。オレも耐えてきたから今があるのだ、と心底思っているはずです。けれどもその陰で多くの人たちが消えていったことは忘れてしまったのでしょうか? 彼ら彼女らは耐えることのできなかった負け犬だ、という評価なのでしょうか? どうして芸能界の在り方について疑問を持たないのでしょうか? 持つわけがないよね、だって、今の地位を手放したくはないからね。

 

 

 

 演劇界ではパワハラではなく普通の行為だ、という考えは、先般の日野皓正氏の「平手打ち事件」と共通しています。彼は、こんなことを報道する方が文化として問題なのだ、とわけのわからないこと言っていましたが、中学生に平手打ちをするような人間に文化云々を言われたくはない。日野氏の生演奏を聴きに行ったことを隠したくなる気分です。けれどもそこにはあるものは、好きなことをやっているのだから、それを指導してもらっている人間から、たとえ理不尽な行為であっても許容すべきだ、という意識があるのは間違いありません。演劇界で言えば出演をさせてもらっているのだから、選んでもらっているのだから。テレビの世界でも、それはきっと同じなのでしょう。

 

 でも本当にそうなのでしょうか? 私は断固として反対します。なぜなら如何なる理由があろうとも尊厳を侵される行為は決して許されない、と信じているからです。
 今回の件がそれに該当するのか判断はできません。しかし報道のニュアンスは「わがままな女優」という印象を作り出そうとしているようです。結局は「成功者」や「勝者」、または権力を持っている側の意向に沿っており、演劇界さらには芸能界の体質に疑問を投げかける姿勢はないようです。

 

「好きなことをやっているのだから」「自ら希望したことなのだから」多少のことは我慢すべきだという考えは、突き詰めれば、高等教育無償化の目的と合致するのです。それは、
「国家が金を出して勉強をさせてやっているのだから、国家に従うのは当然だ」という思想と根は一緒なのです。

 

芸能界であっても人権が守らねばならないのは当然です。世間を賑わせた〝奴隷契約〟なるものや、交際禁止・結婚や妊娠の制限、さらには事務所の移籍問題など、日本の現状はお寒い状況と言えるでしょう。だからなのか、日本の映画やドラマや演劇に接する機会がめっきり減ったのは、どんなに素晴らしく描かれたとしても、それを演じている人たちの実態を思うと感激が半減してしまうからなのかもしれません。
 例えば人権の大切さを描いた劇だったとしましょう。ところが出演している人たちや裏方さんたちの人権が侵害されていたとしたら・・・・実に質の悪いブラックジョークになってしまいませんか?

 

おそらくオマエなんかに応援されなくても構わないと言われるでしょうが、高橋克実さんは好きな役者さんだし、カンニング竹山さんも優れた芸人だと思っていたので今回の発言はとても残念でした。

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Author:カイトアキラ
もうすぐ老人と呼ばれる年齢になりました。
今までオートレース・ギャンブルについて書きましたが、今の日本の状況を考えると、たとえ影響力がなくても、もしかしたら若い人たちに響いてくれたら、という微かな希望を持ってブログを続けようと思います。
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