この国の未来を考える

中国艦船・領海通過報道の意味

領海通過の背景

69日および615日に発生した、中国艦船の領海通過が新聞やテレビのなどでニュースとして報道されました。大半は事実関係だけを伝えるもので、その意味や背景に関しては伝えられていませんでした。その後たまたまだったのですが、週間金曜日と東洋経済オンラインにて、この件についての解説記事を読む機会がありました。
奇しくも二つの記事に共通していることは、日本政府の抗議を筋違いと指摘していることです。
軍事オタクでもない私が解説しても仕方がないので、少し長くなりますが記事を引用します。週間金曜日での軍事ジャーナリスト・田岡俊次氏の記事から、


69日・尖閣諸島周辺の接続水域通過について、
●海洋法条約は幅12海里(22キロ)の領海の外側に、12海里の接続水域を設けることを沿岸国に認めている。(中略)沿岸国は密輸、密入国防止と検疫のために民間船を検査できるが、領海ではないから他国の艦船は自由に通行できる。
だが日本政府は中国艦船が接続水域に入ったことで緊張し、深夜に国家安全保障会議を開き、外務省の斎木昭隆事務次官は午前2時、程永華駐日中国大使を外務省に呼び「緊張感を高める」と抗議、「直ちに退去せよ」と要求した。自宅前の公道を他人が通ったのに怒り、どなり込むクレーマーのような行動だった。


615日に関しては、
●一方、615日未明には、中国の「東調」級情報収集艦(6000t級)が鹿児島県の口永良部島と屋久島西方の日本領海を突き切る事件が起きた。(中略)屋久島西方のトカラ海峡は日本領海内ではあっても、公海と公海を結ぶ「国際海峡」だから海洋法条約により「すべての船舶、航空機が通過通行権を有する」と中国国防部は言う。だが、同条約では外国船舶は海峡通過中に「いかなる調査活動も行うことができない」としている。「東調」級は電波情報収集艦だから、日本領海通行中に電波を受信していた公算は大きい。その証拠はないが、他人の家に盗聴器を仕掛ければ「実際には聞いていなかった」と言っても、盗聴と見なされるのと同様、日本が中国に抗議しても他国は当然と思うだろう。
領海外の接続水域に中国のフリゲートが入ったことは深夜に大使を呼び付けて激しく抗議をした一方、領海を情報収集艦が航行したのには電話で中国公使に「懸念を伝えた」というのは全く逆の対応ではないかと思わざるをえない


なお補足として69日の中国フリゲート艦「馬鞍山」の行動は、ロシア艦の通過を海上自衛隊が監視していた様子を見るために接近した可能性があること。そして615日では、海上自衛隊とアメリカおよびインド海軍が沖縄東方海域での共同演習を実施していたため、佐世保から出たインド艦2隻を追尾していた可能性を指摘しています。さらに記事の最後の方で田岡氏は、海洋法をよく知らない政治家に従ってしまった外務省官僚の〝だらしなさ〟にも言及していました。
東洋経済オンラインの筆者は69日・15日とも合法であると指摘し、やはり抗議については「筋違い」であると書いています。内容について田岡氏とは認識の違いがありますので、この点について言及できるほどの知識が私にはないので、興味のある方は参考までに読んでみてください。

では、いったい何が問題なのでしょうか。田岡氏の指摘通りであれば〝中国が日本を挑発している〟と認識するには無理があることです。

69日のケースは「接続水域の航行」が自由なわけですから、領有権を主張し合っている場所だとしても、そのこと自体が緊張感を高めるとは言えないでしょう。
615のケースでは、田岡氏は合法ではなく「グレー」という認識のようですが、これも日本に対する監視というよりインド艦船の様子を探ったと解釈する方が、より実態に近いと考えるのが自然だと思います。何よりも中国とインドは仲が悪いし、実際に過去に於いて国境紛争を起こしていますから、インド海軍の動向に関心を持つのは当然だと言えます。そもそもこのような艦船の行動は、善し悪しは別にして地球上の至るところの海域で実施されているのではないでしょうか。〝海軍〟という存在がある限り、もしかすると永遠に続く行動とも思えるのです。
このような前提に立てば、近年に於いて特に珍しいことではないのかもしれません。けれども日本政府は、わざわざ時期を選んだ発表したのでは? と勘繰りたくなるのです。何しろ参議院選挙の直前ですし、安保関連法案の正当性を訴えるために〝危機〟があるのですよ、と印象づけようとしていると思えるのです。

さらに630日では統合幕僚長が会見で「空でも海でも、中国軍の活動がエスカレートしている印象を受けている」と発言しました。併せて発表された内容は、4月~6月の戦闘機によるスクランブル回数が1月~3月の回数とほぼ同数になる見通しということでした。この数字だけで考えれば、この時期に特に増えたというわけではないようですし、そもそも過去の数字が報道されていないので、過去水準最高と言及されても比較のしようがないのですから、俄かには信じ難いと思います。
やはり、どうひいき目に見ても〝意図的〟だと感じるのは過敏でしょうか。


軍事問題には冷静な分析が大事

田岡俊次氏は元朝日新聞記者で軍事を専門としている人です。もう56年前だったと思いますが、ある番組で「海自・空自と中国海軍・空軍が戦闘した場合、自衛隊が圧倒的に勝つ」と田岡氏は言っていました。その理由は装備に違いがありすぎるからで、現代の戦闘は武器能力で決まると以前に書いたのも、この発言を参考にしたものです。さらに中国の国防費が増えているのは、最新兵器の前では全く役に立たない古い兵器が多く、新しい兵器に順次入れ替えているが新兵器ほど値段は高いので、国防費(軍事費)が増すのは当然だということです。自衛隊も高度成長期には倍々ゲームのように軍事費が伸びて行ったとのこと。これは経済成長すれば、どこの国でも必然として起きると解説していました。

このように田岡氏は難しい軍事について、わかりやすく丁寧に説明をしてくれるので、10年前以上から記事を読んでいました。何よりも事実に即して冷静に分析しているからですが、今回の件でもそれは健在のようです。
もう一つ付け加えると田岡氏は、だいぶ前から沖縄の海兵隊は必要ないと言っていますが、それに関連してユーチューブ・のりこえねっと「渡瀬夏彦の、うちなー民主主義最前線」の628日放送を、多くの若い人たちに観て欲しいと願っています。元沖縄タイムス論説委員でフリーライターの屋良朝博氏が、海兵隊についてわかりやすく解説しているので参考になると思います。
詳しくは観ていただくとして、みなさんは、海兵隊と人民解放軍が共同訓練している事実とか、海兵隊の役割がテロ対策と大規模災害に対する活動へと変貌していることを知っていましたか。恥ずかしながら私は知りませんでした。これも〝事実〟に基づいて冷静に分析しているのです。


どうか探してください

安保関連法案の前提としていることが如何に実態とかけ離れているか、さらには平然と嘘をついて国民を欺いている安倍政権と支持勢力。正直、空恐ろしくなります。ただ悲観的になっても得るものは何もないので、たとえ小さな声でも上げることが大事だと考えています。
これからの21世紀を生きてゆく若い人たちにとっての現在のマスコミの大半は、伝えるべきことを報道していないので、「真相」を知ることが難しいのは事実です。けれども意識をもって探せば、細々とではあっても伝えている人もいますので、どうかそういうものに接して投票の参考にして欲しいと願っています。


追記

この文章を書いている途中でバングラデシュでの無差別テロの報道に接しました。犠牲になった方々は、さぞ無念だったと想像するに余りあります。私にできることは、ただ冥福を祈るばかりです。
まだ報道等で具体的なことは判明していないようですが、襲撃の目的として日本人を狙ったのか、それとも不幸と偶然が重なっただけなのか。もし前者だとしたら、多くの人たちの懸念が現実となってしまったようです。もう世界中のどの国に行っても、無差別テロに巻き込まれる可能性と、日本人だから狙われないという状況もなくなったと考えるべきなのでしょう。
正直、テロと戦うと言われても具体的にどうすべきか、私には見当もつきません。基本的には危険性の高い国や地域には行かないことでしょうが、私たちが暮らす日本では起きないという保障はありません。しかし、わずかだとしても危険性を減らせるとすれば、それは〝アメリカの手先〟と見られないことでは、と思えてなりません。
犠牲になった方々の冥福を心からお祈り申し上げます。合掌

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村

 

スポンサーサイト

 | HOME | 

 

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

プロフィール

カイトアキラ

Author:カイトアキラ
もうすぐ老人と呼ばれる年齢になりました。
今までオートレース・ギャンブルについて書きましたが、今の日本の状況を考えると、たとえ影響力がなくても、もしかしたら若い人たちに響いてくれたら、という微かな希望を持ってブログを続けようと思います。
偏っていると感じるかもしれませんが、私は個人ですので、ご了承の程をお願いします。

電子書籍案内

お薦めです

このブログをリンクに追加する

最新記事

月別アーカイブ

できればプチっと


社会・経済ランキング

こちらも良かったら

カテゴリ

この国の未来 (90)
オートレース (32)

最新トラックバック

検索フォーム

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

FC2Ad

Template by たけやん